川崎ジュニア的練習法その7<バドノートの実践>1回目

 
<バドノートについて>
 選手とのコミュニケーションを取るために、初任の時から「バドノート」を書いていました。当初は班形式で5~6人で1冊のノートを回して記録していくようにしていました。「羽球音」と名付け、生徒から指導者へ、そしてまた生徒へ、生徒同士に声が音のように届くようになればと思って始めました。今回はその後に始めた「個人ノート」形式での実践を書きます。5回に分けて掲載します。
13冊のバドノート
【方法】
 B5版のノートに、毎日の練習記録を中心に大会や練習試合結果をまとめることや、自分の思っていることや、日頃悩んでいること、プレーでの疑問点などを自由に書かせました。毎週部活が休みの月曜日の翌日に必ず提出させて、できるだけその日の内に読んで赤字で感想を入れて返却します。
【効果】
 その日の自分を書き残すことで、いつの日か振り返り、見つめ直すことができる。さらに、自分のプレーやチームの状態を考えることにもつながった。指導者の思いも書くことで選手に言葉と記録で指導が深まる。
【注意点】
 内容をしっかりさせる指導をする。必ず書くこと(日付・練習内容・試合記録・反省・目標)を指示する。漢字を使うこと。最低半ページは書くこと。自分の考えを持つこと。必ず火曜日に提出する。指導者はその日の内に感想を書いて返却する。
 今回は本人・保護者の承諾を得て、中学3年間のノート13冊に書き込められた、現在18歳の女子選手の「バドノート」を紹介します。彼女の「心の動き」「成長の過程」を感じ取ってください。多くは練習後に自宅で書いたそうですが、1日5ページに渡る力作もありました。電車で通学していたこともあり、電車を待つ間の時間にも書いていたそうです。

選手名:鎌田芽萌さん 18歳大学生(2018年現在)

現在:2018・6/24
中2市新人戦
 小学4年生から地域のジュニアクラブでバドミントン競技を始める。小学生の時の戦績にはあまり目立ったものは無かった。
中学三年間の戦績は次のようでした。                                      

【3年間の流れ】

 小さな身体に強い意志を持ち、毎日努力に努力を積み重ねて、自分を鍛え上げてきた選手でした。小学生の時にバドミントン始めましたが、目立った戦績はありませんでした。縁があって自分の所属する中学校に入学してきました。中学3年間で様々な壁にぶつかっても、それを乗り越えてきました。 しかし、中学最後の夏県総体前の6月に大きな怪我をして大会に出られなくなり、2年次に関東大会まで出場できたのに、この怪我で連続出場が不可能になりました。悩みに悩み、リハビリを開始して、左手で練習をしたり、下半身を鍛えるために1人ランニングを涙を流しながらしていました。
 そして、9月に始まる市総体に出場すべく、懸命の努力を重ね、医師とも相談しながら痛む肘と戦い、そこから這い上がり、市総体優勝3連覇の最後のスマッシュを打つことが出来ました。
 高校に入学してからもその姿勢は変わらず、2年次には中学3年の時に出場できなかった同じ体育館でダブルス県準優勝でインターハイ出場。3年次には念願の県優勝で連続インターハイ出場を果たしました。


バドノートから
<その1:【中1】入部当時の目標>
 関東大会感想 1年:8月7日

 私にとっては初めての関東大会を見ました1回戦目で惜しくも負けてしまいました。でも私がレギュラーになったら、今の先輩たちの記録を越したいと思いました。私は関東大会で見て得たこと、知ったことは、私と同じ学年の人がいるということです。1年生で出ていてとても羨ましかったです。私は1年生の時に出れなかったので、来年は絶対出たいです。
 もう一つ得たことは、バトミントンは頭を使うんだなということです。返すところが良くなかったらすぐ打たれてしまうから良く頭で考えて相手の隙を見つけて相手の苦しいところに打たなきゃ自分が苦しくなってしまう。強い人はちゃんと頭を使っているんだなと感じました。
 この大会で得たことを練習で活かしたいです。先輩は個人戦で一回戦で負けてしまいました。上には上がいるんだなあと思いました。私も先輩の試合が見たかったです。
 来年は自分も個人戦で出たいです。そのために毎日練習を頑張ることと、体力をつけることと、技術を磨くこと、ミスをなくすことです。体力をつけるためには、先輩は毎日夜走っていると聞いたので、真似をします。ミスをなくすには、オールロングでラリーを続けることです。技術を磨くには基礎打ちの時に、意識しながらやることです。

(1年生の時期に先輩の頑張った姿を見られたことが、今後につながります。よい目標を得ました)

<その2:【中1】はじめて叱られたこと>
新チーム最初の練習試合 1年:10月8日

とびつき!カット
 
今回行った横浜の学校には全日本ジュニアの大会で自分たちと一緒だった3位だった人がいて、今日ここに来た一番の目的はそれでした。1セット目の後半は前衛でちゃんと叩けていたので良かったです。2セット目から少しミスが多くなってしまいました。駄目だったところは、前で自分でヘアピンを落として相手がクロスヘアピンを打ってきて取れなかったことです。自分は戻りが遅かったです。クロスヘアピンは3回ぐらい決められました。クロスヘアピンは難しいのに、なんであんなに打てるのだろう?とずっと思っていました。でも先生のアドバイスを聞いて、相手がすぐ入るところに行ってしまうからだと分かりました。もう一つは前に落としたので、下がってしまうことです。だから次に来たシャトルが前に来た時、いつもミスしていました。さらにもう一つは、自分がドライブで返す時に、すぐ前に出てしまったことです。分かったことはドライブはドライブでも、それからスマッシュ打てる人もいるから相手が下から入った時だけ、前に出てラケットを上げるということです。ドライブを打ったから、相手は下から入ってくるとずっと思っていました。2-1のレシーブでアタックをしてる人の方が下から入ってきた瞬間に自分が前に出てくいくと、今日すごくよくわかりました。
 負けて相手を研究せずにボーとしていたので、叱られました。今日は横浜まで行ったのに2試合しかできなかったのが、とってももったいないと、ずっと思っていました。遠くまで行ったのに。私は自分で思ってることがすぐ行動に出せないで、どうしたらいいかわからなかったです。でも先輩はちゃんと行動をして、さっき負けた相手の線審していて研究していた。それを見てやっぱりすごいなと思いました。そうやってすぐ行動ができるようにしたいです
 私が叱られている間、他の人が代わりにシングルに入ってるところを見てとても悔しかったです。すごく後悔しました。私の代わりに先輩が同士が組んで試合をしてる時も、笑顔でハイタッチしてるところを見て、なんかよくわからないけど、嫌な気持ちになりました。今回すごく叱られたので、同じことはもう絶対にしないようにします。
 あと私が相手のダブルスで一番やりにくかったところが、先輩がサーブをして相手がレシーブだった時、どっちに飛んでくるか全く読めなくてそれで取れなかったことが何回もありました。そこがよくわからなかったです。こっちのふりをしてあっちの方に打ったのかなと思っていました。フェイントをかけたのだと思いました。フェイントで相手をだますのもいいなと思いました。
 2回目に試合を行った時に勝てた一つは先輩のおかげです。叱られて負けたら、また叱られると思って焦って最初はミスばかりしていたけど、ミスをする度にアドバイスをしてくれて、追いついた時とかには、「もう一本取るよ」とか言ってくれたのがとても嬉しかったです。絶対取るぞという気持ちになりました。
(自分を向上させることが大切です。それも自分で考えられるようにすることです。負けたのなら相手を研究する。悔しさの中から立ち上がれ)



 ここまで読んでいただきありがとうございました!今後の選手への力となればと思い本人・保護者の同意を得て、公開しました。赤字はノートへの自分の記述およびその時期の様子を書いています。2回目は中1の11月~県新人戦までを掲載します。by組長